マラソンを走ってるときに起こっているちょっと怖い身体の変化

マラソンを走ってるときに起こっているちょっと怖い身体の変化

42kmを走るっていうのは、やっぱり体の中で色々起こるんです。

毎年4月の第3月曜日に開催されるボストンマラソン。今年は4月17日に3万人以上のランナーがボストンの街を走りました。チャリティなどではゆっくり走ることも多いですが、練習を重ねたランナーは42.195キロをたった2時間ちょいで走り抜いてしまいます。それでもマラソンを走るというのは、まるで心臓から循環系を通って、脚の筋肉や腎臓まで体全体を肉挽き器にかけて切り裂くような、そんな大仕事なのです。マラソンを走るとき、体の中で何が起こっているのか見て行きましょう。

体温の上昇

イェール大学のMark Perazella教授によると、ランナーはスタート地点ではだいたい37度くらいの体温で走り出しますが、ゴール地点では38.8度まであがるそうです。

体温が高くなればなるほど、心臓は筋肉への血流の流れを一定にするために、より強く血流を送り込む必要があります。「血流はランナーの皮膚をクールダウンさせるために骨格筋から血流を借りて劇的に増えます」と説明するのはマサチューセッツ総合病院の医師Gregory Lewisさん。そしてレースが終わる頃にはランナーの汗が乾き始めて体温が一気に低下。低体温症に陥る危険もあります。なので、ランナーはレース後にマイラー・ブランケットなどで体を温める必要があります。

腎臓に打撃

イェール大学のChirag Parikh医師率いる研究チームは、レース前とレース直後、そして24時間後に22名のランナーの血液と尿のサンプルを採取して分析をおこないました。すると82%のランナーはレース直後に腎臓が働きを止め、尿素などが血液中に蓄積してしまうステージ1の急性腎不全に陥っていることがわかりました。ちょっと怖いですね。

この研究の共同著者であるPerazellaさんによると、尿を顕微鏡検査した結果4分の3が腎不全を起こしていることがわかり、おそらく腎不全はマラソン中に脱水症状になり体温が上がり、血流が乏しくなることで起こるのではないかとのことです。Asian Pacific Society of Nephrologyなどの他の腎不全に関する研究でもやはりマラソン後に起こっていることが指摘されています。

このマラソン後の腎不全が長期にわたる腎不全を起こすのかどうかは、現在はまだわかりません。ほとんどのランナーは2週間ほどで回復するとのことで、Perazella氏は「マラソンを走った後腎不全が起こったランナーの2週間後以降の研究を正式におこなった症例が今の所ないのです」と話しています。

過度のエネルギー生産

人間の体は動き続けるためにいくつかのものを燃やします。筋肉と肝臓にある糖質を含む炭水化物はその主なエネルギー源です。私たちの体は脂肪を燃やしますが、それはごく少量なのです。栄養コンサルタントのDavid Mark博士によると、ランナーのカロリー消費率は1時間150kcal(キロカロリー)でマラソンをスタートします。走り始めるとそれが一気に1時間700から800kcalに上がるそうです。

私たちは平均で500gのグリコーゲン、もしくは2000kcalのブドウ糖を体に貯蔵しています。1マイル(約1.6km)ごとに100kcalのブドウ糖を燃やすので、20マイル(約32km)走ると空っぽになってしまいます。これはランナーがもうこれ以上走れないという状態でよく使われる「壁にぶつかる」ときです。そして糖分が空っぽになった体は、エネルギー源として脂肪を燃やし始めます。心臓や筋肉は走り進めて行くのにより助けが必要となり、酸素を取り入れるのに苦労する状態になります。

しかし、この壁を打破する方法もあります。ご本人もランナーで今回7回目のボストンマラソンを走るJohn Hadcock博士によると、マラソンの最初をゆっくり走り、一定のペースを保つトレーニングをするのがもっとも効率のいい走り方と言えるそうです。そうすることで体の余分な脂肪を燃やしつつ、1マイルごとに80kcalのブドウ糖だけを使うことができ、マラソンの終盤までエネルギーを取っておくことができるからです。

マラソンの数日前からランナーたちはパスタなどの炭水化物を食べることが多いですが、Hadcock博士は「マラソンの3日前から炭水化物を多く食べて、脂肪やタンパク質を少なくする食事がいいでしょう。こうすることで筋肉にグリコーゲンを貯蔵できるのです」と話しています。

そして、もうひとつランナーがブドウ糖を使い切るのを避けたい理由があります。それは、稀に低血糖で気を失ってしまうランナーもいることです。低血糖はランナーが走っている最中にスポーツドリンクや甘いジェル(ゼリー状の飲料)を食べないと起こってしまいますが、ジェルなどを食べ過ぎるとブドウ糖の値が上がりすぎて頭痛やむかつきを引き起こしてしまうこともあります。

心臓と血流の変化

医師のGregory Lewisさんは研究で、レース中には心臓の左心室はマラソンの負荷に耐えることができるため、右心室が左心室よりも不均等に拡張することが判明していると話しています。また、ランナーは心臓細胞の内側にトロポニンを作り出すそうです。トロポニンは心臓発作のリスクがあるかどうかを判断する際に見られるもので、2012年に発表された研究では心停止で亡くなった59名のランナーの死因は心筋症によるものだったそうです。

マラソンを走るとき心臓の状態は重要だと考える人が多いのと同時に、ランナーは大きな肺であったほうが良いという誤解を持っている人も多いようです。「心臓血管系と比べると、肺はそれほど動きがあるものではありません」とLewisさんは語ります。マラソン中の血液配分の順番は、脳、心臓、胃の周りの筋肉、そして腹部臓器の順なんだそうです。

筋肉・関節の痛み、疲労と「壁にぶち当たる」こと

マラソンを走っているランナーを見ていると、前かがみに走っている人が多いことに気づきます。ゴール近くになるとその姿勢はより多く見られます。Hadcock博士によると、それは筋肉中の乳酸量が増え、痙攣を起こすからだそうです。乳酸は、ランナーが酸素の吸引よりも早いスピードでブドウ糖を燃焼すると溜まっていきます。マラソンの終盤になると筋肉組織や関節の損傷をより感じやすくなり、痛みは避けられないものとなってきます。特に下り坂では一歩一歩踏み出す足がクッションのようになるからです。24キロから32キロくらいに差し掛かると、より衝撃を感じやすくなります。

ボストンマラソンでは32キロ地点を過ぎたところに心臓破りの坂が待っています。ランナーが1番疲れている地点での酷な坂なのです。David Mark博士は「その時点でランナーは炭水化物を使い切っていますから、血糖値がどんどん下がってきます。簡単に言うなら、タンクが空の状態で走っているのと同じです。脳を動かせるのはブドウ糖のみなので、集中力がなくなり、視界が曇って、スローダウンしてしまいます」と説明しています。

ランナーのFrank Biello Jrさん(36歳)はボストンマラソンのスタート直前に「ほとんどは消耗による神経と筋肉の痛みなんです。一度壁にぶつかったら、もうあとは精神との戦いです。とにかく精神を集中させてポジティブをキープするためにがんばらなきゃけません」と米Gizmodoに話しました。

マラソンを走っている人を見ていると、特にレースの首尾を走っている一流ランナーなんて気軽にスイスイと走っているように見えますが、体の中ではこんな戦いが起こっているわけです。マラソンとはまさに、身体と精神の耐久レースなんですね。

Fitbit Alta HRレビュー:普通の人にとって、今買えるベストの活動量計

image by Elena Scotti / Gizmodo US / GMG

Sarah Betancourt - Gizmodo US[原文
(岩田リョウコ)

Source: Gizmodo

この投稿へのトラックバック

トラックバックはありません。

トラックバック URL