ダイバーじゃない人も「ダイバーズウオッチ」に惹きつけられるわけ。防水の極限を切り開きつづけてきた腕時計の歴史

いつでもタフで、極限を目指せる人でありたい。ならばこそ。

人と時をつなげるガジェットといえば腕時計。携帯電話・スマートフォンが普及してから「腕時計はいらない」と言う人も増えましたが、スマートウオッチの台頭から改めて、腕時計を再評価する人が増えてきたのも事実です。

憧れのブランドを身につけたときの幸福感や、星の数ほどある腕時計から自分好みのデザインを探すときの楽しみは、やはりトラディショナルな腕時計ならではの感覚でしょう。色も構成も千差万別ですが、さらにデジタル式、数多の機能をコンパクトな機構で実現するクオーツ式、文字板だけではなく内面もエレガントな構造をもっている機械式など、ムーブメントの違いによってバリエーションも千差万別です。

そんな星の数ほどある腕時計の1つに、防水性能の極限を切り開きつづける「ダイバーズウオッチ」というカテゴリーがあります。今日はそのダイバーズウオッチに関する話。

200mの深海でも動き続けるダイバーズウオッチ「PROMASTER アクアランド」

1806_citizen_promaster_1Photo: 小原啓樹

6月14日に発売される2つの「PROMASTER(プロマスター) アクアランド」は、日本が世界に誇るシチズンのダイバーズウオッチ最新作。200m潜水用防水機能に、わずかな光で充電を行なうエコ・ドライブを組み合わせたモデルです。深海という極限で過酷な場所でも動き続けるタフな性能と、視認性を重視したフェイスデザインが組み合わさった結果、合理的で日々の生活も共にできるカジュアルな装いになっています。

と、言われても、いままでダイバーズウオッチを手にしたことがなければ、どのようなポイントを見極めて評価するかクエスチョンなはず。ここでいったん、ギズモード取材班は東京にあるシチズンミュージアムを訪れ、ダイバーズウオッチの構造と歴史を学びました。

1806_citizen_promaster_9Photo: 小原啓樹東京・西東京市のシチズン時計本社内にある、シチズンミュージアム

ダイバーズウオッチは、その名のとおり、潜水現場が求める機能をコンパクトなボディにおさめ、進化し続けてきた歴史があります。今ではその防水性能と堅牢性から、マルチロールに使える腕時計として、ダイバーではない人からも高い人気があります。

腕時計そのものは19世紀に誕生、21世紀に入ってから市販されるようになり、以降いろんな形でバリエーションが増えていきました。なかでも腕時計は、空気内の湿気やチリ、そして人体の汗が原因での故障があったことから気密性が重要視されるようになっていきます。ダイバーズウオッチは、その気密性の限界を目指すカテゴリーとして必然的に生まれました。

今回のPROMASTERを例に、ダイバーズウオッチが共通して持つ特徴を見てみましょうか。

180527_citizen_promaster_museum_1Image: シチズン

・視認性に優れた針、インデックス
海中のなかでも時間がわかるように、大きな針・インデックス(数字の刻印)が使われている。また光が届きにくい場所でも時刻を把握できるように、夜光塗料が使われている。

・回転可能なベゼル
潜水前にベゼルを回転させ、12時の丸いマークを現在の分針にあわせる。そうすることで潜水時間を確認できる。

・ねじロックりゅうず、ねじロックボタン
意図せずりゅうずが巻かれたり、ボタンが押されたりしないように、本格的なダイバーズウオッチはねじロック式のりゅうず・ボタンが使われている。

・伸縮するバンド
ダイバーズウオッチはウェットスーツの上から巻く場合が多いが、ウェットスーツは海中の水圧によって縮んでしまう。そのため潜水前にバンドをきつく締める必要があるので、ダイバーズウオッチのベルトには伸縮性のあるウレタン製のものが用いられる。

そしてダイバーズウオッチのボディは大きいです。今回シチズンから発売されるPROMASTERダイバーズウオッチは、ケース径46.1mm、厚み16.4mm。ゴツいとでもいいましょうか、クオーツ式で薄いものが多い近年の腕時計と比べると、規格外の迫力。

1806_citizen_promaster_11-1Photo: 小原啓樹ケース径46.1mm、厚み16.4mm

では、なぜダイバーズウオッチが腕時計の1ジャンルとして確立され、ダイバーだけでなく、いろんな人に好まれてきたのか?

歴史の話に戻ると、1926年に完全密封のケースを用いたロレックス オイスターが誕生。また1953年には世界初の本格的なダイバーズウオッチであるロレックス サブマリーナーが登場。100m防水を記録します。1957年には30気圧防水を実現したオメガ シーマスター300がリリース。

ロレックスやオメガ、こうした海外の有名メーカーを成長させたのが、当時もとめられた気密性とそこから生まれたダイバーズウオッチであり、これらのメーカーはいまもなお、主力カテゴリーとしてダイバーズウオッチを製造しています。水深何百mの環境でも使える堅牢性は、壊れにくい安心感とその見た目から、長年、男性の憧れが強いカテゴリーなんですね

世界初の「電子水深計」を搭載したシチズンのダイバーズウオッチとPROMASTERの歴史

1806_citizen_promaster_6Photo: 小原啓樹世界初の電子水深計を搭載した1985年のダイバーズウオッチ「アクアランド(左)」と2018年の「PROMASTER アクアランド(右)」

そして日本の時計メーカーであるシチズンも、1959年には完全防水時計「パラウォーター」を発売しました。その高い防水性能を証明するべく、1963年にはパラウォーターを乗せた沢山のブイを房総半島から放流。これは、国による黒潮の潮流調査を兼ねたプロモーションで、約3年後にはブイがアメリカ本土に到着。パラウォーターはなお動いており、その防水性能の高さを証明しました。

1806_citizen_promaster_3Photo: 小原啓樹シチズンミュージアム館長の坂巻靖之さん

シチズン史料室室長であり、シチズンミュージアム館長でもある坂巻靖之さんいわく、シチズンの防水腕時計の歴史は4気圧防水のモデルからはじまりました。そこからプロフェッショナルな現場でも耐えられるようにと、より高いスペックを持つモデルを開発していきました。

1806_citizen_promaster_7-1Photo: 小原啓樹

坂巻「1968年、シチズンのダイバーズウオッチがオーストラリアの海岸で発見されたんですよ。最初は全体がフジツボの貝殻で覆われていたのですが、見つけた人が貝殻をとっていくと、シチズンの腕時計であることがわかって連絡をくれたんですね。驚くべきことに、時計そのものは動いていました。その時計は自動巻きモデルで、波の揺れによってゼンマイが巻かれ続けていたようです

そして1989年、本格的なスポーツモデルの全世界共通ラインアップとしてPROMASTERが誕生します。 登山用の「LAND」、飛行機パイロットのための「SKY」、そして海に潜るダイバーのための「MARINE」の3カテゴリーから構成されるブランドです。

1806_citizen_promaster_4Photo: 小原啓樹シチズン チーフデザインマネージャーの殿堀隆二さん

現在シチズンの腕時計デザインを手がけているチーフデザインマネージャーの殿堀隆二さんいわく、PROMASTERを語る上で外せないモデルがあるそうです。それはPROMASTERのブランドが登場するまえの1985年製のダイバーズウオッチ「アクアランド(デプスメーター)」。PROMASTERの高性能・高信頼性の礎ともなったモデルです。

1806_citizen_promaster_5Photo: 小原啓樹アクアランド(デプスメーター)。ベルトに描かれた数字は「無減圧限界値」。たとえば21mの深さまで潜ったときの潜水時間が50分以内であれば、減圧のための停止をせず浮上してもよいことを示す。

殿堀「世界初の電子水深計を搭載したダイバーズウオッチです。のちのPROMASTERに貢献する技術的なタームポイントになりました。この迫力あるフェイスはほかにはないですね。見ればみるほど華飾なデザインではないし、本当に必要から来たデザインだと思います。デザイナーとしても、ダイバーズウオッチはこれを無くしては作れないです」

カラバリを増やした一時代、本格スポーツはニッチな市場だからこそ誠実に

PROMASTERの時代に入ってからも、数多くの名モデルが登場しました。しかし時には、市場ニーズを読みすぎることもあったそうです。

殿堀「シチズンをもっと若者に認知させたい要望があり、スポーティモデルで多くのカラーバリエーションを作ったことがあります。ショップで手にとってもらえるように、というのが狙いですね。機能は確保しているのですが、個人的な意見としては、PROMASTERではやらないほうがいいと考えています。PROMASTERのコンセプトからは外れているかなと」

プロユースオンリーではなく、マルチロールなシチュエーションで頼れる腕時計だからこそファッショナブルなモデルがあってもいい、という流れだったのでしょう。しかしあくまでPROMASTERにおいては、極地での使いやすさこそ重視すべきだと殿堀さんはいいます。極地を目指す機能に基づいた形こそが、ダイバーズウオッチに惹きつけられる一つの理由でしょう。

1806_citizen_promaster_12Photo: 小原啓樹

では、最新モデルはどうか? 特に暗い場所での視認性を追求していますね。殿堀さんいわく、何分潜ったかをすばやく認識できるように分針の夜光の面積を極力広くしているそう。また、搭載しているムーブメントが回せるギリギリまで針を大きなサイズとしたとか。

時針、分針、秒針に加えて水深計、最大水深計がつく5針構造になっています。くわえてエコ・ドライブの充電状態がわかる充電量計もつきます。この5針構造&耐圧性能を確保するために厚みのあるケースが用いられていますが、それが切り立った深みのあるフェイスを作り出していてかっこいい…。

またエコ・ドライブの搭載もポイントです。電池式のクオーツ時計だと電池交換時にパッキンが劣化して防水性能が下がってしまいますし、自動巻き機械式はいざというときに使えないかもしれません。でもPROMASTER アクアランドのエコ・ドライブなら光に当てるだけで充電してくれる上に、充電量計もつくので安心です。

また衝撃検知、充電警告、過充電防止、水感知、急浮上警告などの機能も備えており、ダイビングで必要とされる機能をフルカバーしています。もちろん、電子水深計も搭載しています。

最新のPROMASTER アクアランドは2モデル構成。ざっくり分けるとダイバー用・ビジネス用

1806_citizen_promaster_2Photo: 小原啓樹ウレタンバンドモデル「BN2036-14E

長い歴史を持つシチズンのダイバーズウオッチ&PROMASTER。改めて記しますが、6月14日に最新モデルのPROMASTER アクアランドが2モデル登場します。PROMASTERとはなにか?ということを原点に立ち戻って見直し、1985年のアクアランドより続く伝統を現代風にアレンジ。

ダイビングシーンにマッチしたウレタンバンドがつくのは、上の写真のモデル「BN2036-14E」です。ダイビングスーツの上からでも着用できるようにウレタン延長バンド付き。素肌の上からつけるときでもベルトが余らず、ダイビング時にも対応する仕様です。

またりゅうずや、ねじロックボタンのねじ、水圧センサーのハウジングに傷をつきにくくする硬化技術「デュラテクトDLC」を採用。タフさに寄せた設計が魅力です。

差し色はイエロー。シチズンの研究の結果、海中の暗い場所でも明度が残りやすく、ブラックフェイスとのコントラストで判別しやすいのが黄色だったことから、このカラーリングとなりました。価格は6万8000円(税別)で、この性能を考えるとリーズナブル。

1806_citizen_promaster_10Photo: 小原啓樹ステンレスバンドモデルの「BN2031-85E

対してビジネスシーンにマッチするのが、ステンレスバンドモデルの「BN2031-85E」。外装はすべてステンレスで、スーツファッションとのマッチングがGOOD。

明度が残りやすいイエローに対して、彩度が残りやすく認識しやすい差し色のライトブルーが入っています。ビジネスシーンにマッチする色ですね。価格は7万円(税別)です。

2つのモデルの違いは差し色や素材など、見た目の部分のみで、機能やスペックの違いはありません

1806_citizen_promaster_8Photo: 小原啓樹世界初の電子水深計を搭載した1985年のダイバーズウオッチ「アクアランド(左)」と2018年の「PROMASTER アクアランド(右)」

200mの深海域にたどり着けるスペックを持った「PROMASTER アクアランド」は、PROMASTERブランドが生まれる前からつづく歴史と、高い技術力をもつシチズンのチャレンジスピリットから生まれた腕時計です。

冒頭でも記したように、今はスマートウオッチが台頭しつつありますが、トラディショナルな腕時計とスマートウオッチの違いについて、坂巻さんは「腕時計は人の日々と、人生によりそう工業製品。ただ時間がわかればいいというプロダクトと、時を共に過ごすプロダクトでは、同じ工業製品でも違うもの」と語りました。

長い歴史のなかで防水性能の極限を切り開きつづけてきたダイバーズウオッチは、その極地を目指す機能に基づいた堅実な形で、ダイバーではない人も魅了してきました。ダイバーズウオッチを陸上で使うにはオーバースペックかもしれません。でもいつか、冒険をしなければならなくなったとき、その人生の選択と結果を、このPROMASTER アクアランドと共に過ごしてみませんか。


Photo: 小原啓樹
Source: PROMASTER スペシャルサイト, CITIZEN-シチズン腕時計(1, 2

(武者良太)

Source: gizmo

この投稿へのトラックバック

トラックバックはありません。

トラックバック URL